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TW2シルバーレインに登場するキャラ 銀・狼貴と谷繁・碧のキャラブログです

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風二つ(後編)

あ。すっかりアップ忘れてた後編だ。
いや、本当だぞ。
本当に前編といっしょにできてたんだからな??




 

バッティングセンターの中は、料金所と、バッティングスペース、そしてその待機スペースの3つに別れていた。
「どこからいく?」
忍び装束をまとったリリーが夜目を働かせながら問う。
徹也は両の腰に差した忍者刀の黒鞘を確認してから答える。
「料金所からいこうか」
コクリと頷いたリリーの後ろを進む。
しかし、料金所には乾いた血の匂いがあるだけだった。どうやら惨劇はここであったようだが、残留思念はここにないようだ。
二人は次はバッティングスペースへとアタリをつけた。
待機スペースを通り過ぎようとしたところで、徹也が気づく。
「っ」
一息だけを後に、しゃがむ徹也の前を白く小柄な影が通り過ぎる。
「徹也く──!」
息の乱れに気づいたリリーが振り向こうとしたが、それは別の影に阻まれる。
振り回された怪腕をリリーはその右手に装着した大きな篭手で防ぐ。
「包丁ウサギ!」「黒の転校生!」
互いの相手を見据えながら、二人は声を張り上げる。
SYAAA!
そしてゴーストたちが、吼える。
だが、
「──手助けは」「いらないねっ!」
吼えたゴーストたちに、赤手と、忍者刀が突き刺さる。
リビングデッドはその血のように赤い魔手に貫かれて炎を発して、ウサギの姿をした妖獣は冷徹な光に身を凍らせて。
それぞれ消滅した。
「……まずは、二体」「だね」
警戒は解かぬまま、二人はそれぞれの生存を確かめると、バッティングスペースへ向かう。

「そういえば、野球というとさ」
「ん?」
「確か中学校の野球部が丸ごとリビングデッドになってたりする場所があるんだっけ」
「…嫌だなぁ、そんなに量がいたら」
あのグラウンドほどバッティングスペースは広くない。
バッターボックスが五つ。そしてその向こうにはピッチングマシンがそれぞれの正面に設置されている。
バッターボックスとの間にある距離は十五m、天井は十mを少しというところだろう。
確かに十人以上が動くには十分なスペース、だがこちらは二人だった。
そして何より、この二人には致命的な欠陥がある。
二人とも、多人数との戦闘には向いていないのだ。
リリーは先述したように、接近戦に長けているかわりに、それ以外は抜けている。
そして徹也は一応多人数との戦闘も心得ているのだが、本人の気性もあって一体の相手に対してどれだけ重い一撃を叩き込むかに戦術が集中している。
よって、せいぜい相手にできるのは各々二人ずつとしても四体が限界。それに倍する八体となるとまず撤退するべきだった。
「1」と番号がかかれボックスに二人が入ると、グラウンドからぴりぴりと緊迫した空気が漂いはじめた。
ゴーストの前兆だと二人は直感し、暗闇の中を見渡す。
が、闇を突き抜けてゴーストを視認する。
「出た!」「数は……1,2、…よし!」
数えるのを終えた2人は、その数に多少安堵する。
出たのは3体、いずれも人間から生まれたとおぼしきゴースト。
だが、安堵は少し早かった。
「って、ブルーナイトに、鎧讐鬼じゃねぇか!」
「ゾンビは…多分犠牲者だね」
現れたのは、青い騎士甲冑に身を包みランスを構えるブルーナイト、赤い武者鎧に身を包み日本刀を構える鎧讐鬼。
どちらも能力者の間では名の知れた地縛霊である。
間に挟まれたゾンビは、会社員だったのかぼろぼろのスーツに身を包んだ腐乱死体だ。
口の中でそれぞれに哀悼を呟く。だが、次の瞬間には、跳躍したリリーの一撃がゾンビを消滅させていた。
哀れな犠牲者であっても、それが人に害を為すならばその禍根を絶つ。それは能力者としての覚悟だ。
その一撃に反応するように、残るリビングデッドが動く。
青い光を放つ刺突と、赤い燐光を放つ斬撃が、リリーへ向けて放たれる。
ギィンッ!シャキィン!
二撃を受け止めたのは交差された忍者刀。走って前に出た徹也だ。
「青いのをもらう!」
それだけ言い残して、さらにロングコートが跳ねる。
いや、飛んだのはロングコートだけだ。
本人は、ロングコートを宙に投げ上げると、地を低く疾走する。
低く飛ぶ影は空をゆくロングコートを掴んで己の下に寄せる。
表裏が逆転したロングコート。その色は、漆黒。
闇に溶け込む漆黒を纏った徹也はそのままブルーナイトへとひた走る。

「鉄心流免許皆伝、鉄・徹也!」
叫ぶと同時に、大気が吼える。
「俺のリミッター解除だ! くらってもらうぜっ!」
ドンと大気が割れる音がした。だが、接近を黙ってみているほどゴーストは寛容ではない。
ブルーナイトはそのランスを容赦なく敵へと向け、放つ。
しかし徹也はそれを回避すると、加速のままに跳躍し、あっというまにブルーナイトの目前に達する。
ブルーナイトに見えたのは、翻る黒。
「始月!」
超常の力を秘めた前宙かかと落としの一撃が、ブルーナイトの脳天へ決まる。
上体を揺らされるが、ゴーストは着地したその人間に向けて力強くランスを放つ。
早い。だが、それよりも黒が勝る。
「繊月!」
至近距離からのランスの一撃を皮一枚で回避した徹也の、遠心力を利用した蹴りが腹に決まる。
上体に続いて腹部に衝撃が叩き込まれ大きくブルーナイトが傾ぐ。
だが、それでも一矢を報いようと、ブルーナイトは最後の力を込めたランスを徹也の足元へと放つ。
このランスを回避したとしてもその強大な力は床板の瀑布を引き起こし、徹也にダメージを与えるだろう。
だが、それに対し、徹也はさらに一歩をしゃがみこむように踏み込んだ。ランスが頭上へとそれた。
回避されたランスが瀑布を引き起こす。
ゴガァァァッ!!
瀑布の反動が、影を宙へと押し出す。一矢報いたとゴーストが錯覚したそのとき、
「幻夜!!」
瀑布の反動をも利用したサマーソルトが決まった。
「鉄心流、朧三段。冥土にもっていきな」
瀑布に身を跳ねさせられながらも、徹也は消え行くゴーストにそう勝ち誇った。

一方、リリーは赤手の一撃の前に倒れ伏したゾンビを、見もせず、次へと飛び掛る。
狙うは、紅鎧の鬼。
赤手を下段に構えたリリーに対し、大将もまた下段に刀を構える。
「写し夜」
しゅん、とリリーの身体が侍の前から消えうせる。
だが、ゴーストの能力者への嗅覚がその行方を察知する。
彼女の気配は、侍の横を通り過ぎていた。
礫を飛ばしつつ気配を消すことで、夜闇を渡ったと錯覚させる移動術。
しかし、ゴーストの知覚は間に合った。
裏へと回ろうとする彼女へと向き直るより早くさらに声は響いた。
「転じて、紡ぎ八方」
ゴーストの身が突然絡めとられたように動きを止める。
いや、その身には実際に極薄の糸が絡んでいる。
リリーが放った蜘蛛糸が見事に彼の身を縛り付けていた。
蜘蛛糸から逃れようともがく侍の後ろで、女能力者は印を結び、呼吸を整える。
「森羅万象の同胞(はらから)よ、私に力を……」
森のごとき緑のオーラが彼女の身を取り巻く。
そのオーラが虎の形を模したようにゴーストには見えたに違いない。
だが、それに怯むゴーストではない。
その身に渾身の力をたぎらせ糸を引きちぎると、大きく刀を振り上げてリリーに迫った!
「ハァァッ!!!」
シャリィィィン!
鈴なりの音を響かせて、両者が交差する。
だが、果たして没したのはその鎧に風穴を開けたゴーストのほうだった。
鈴なりの音は、赤手によって刀が滑った音にすぎなかった。
滑った刃に浅く頬を切られながらもリリーの放った紅蓮の一撃によって、ゴーストはその身を消滅させていった。


「あたたた……」
「大丈夫? 徹也君」
首魁と見られた二体のゴーストを倒し終え、これで終わっただろうと外へ出たのは、11時少し前。
リリーの刀傷はイグニッションを解除した時点で消えうせたのだが、徹也の身体の節々には痛みが残っていた。
「なんのこれしき! …がふ」
「あああ、徹也くーんっ!?」
全身に力をこめて立ち直ったものの、傷の痛みにがくりと倒れる徹也にリリーがあわてて肩を貸す。
「無理しちゃダメだよ、もー」
「うー、やべ、明日起きれるかな…」
あたた、と打撲のような痛みに気を張る徹也。
その横で、リリーがあたふたと焦る。
「じゃ、じゃぁ」
ん?
「あ……明日、起こしてあげよっか?」

 

深夜の街路に風二つ。
寄せ合い、押し合い、掛け合いながら。
その道先まで駆けてゆく。
朝の街路に風二つ。
急ぎ、駆け足、笑顔をのせて。
門の向こうへ駆けてゆく。

昼の屋上に、風二つ。
たったひとつの幸せ載せて。
雲よ騒げと、駆け抜けて。

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