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TW2シルバーレインに登場するキャラ 銀・狼貴と谷繁・碧のキャラブログです

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鉄の芯は朽ちえず(5)

鉄:これで最後だ。
 んー、結局何をしにいったかってのは…里帰りなんだよな。


「……結局、あのとき、負けちまった」
呟いてから、俺は目を開ける。
ここは、村の裏手にある墓地だ。あれから着替えもしないまま、俺はここにきていた。
そして、前にあるのは……銀の母親の墓だった。
「目を覚ました俺が、かけつけられたのは、ちょうどおばちゃんがかばうシーンだったな」
目に焼きついている。
節々から血を流し倒れこんだ師範代たち、肩と足をやられた祖父。
そして、狼貴に腹を貫かれた両親の姿。
「致命傷のまま、狼貴を抱きしめて…正気に戻したんだもんな。すげぇよ、おばちゃん」
なぜかにこりと笑う笑顔が浮かんだ。
もう余命いくばくかもない彼女の言葉で、この事件はなかったことになった。
銀が気を失って…おきたのは、1週間のあとだった。
やっぱりというべきか、あいつにそのときの記憶はなかった。
彼女の遺言は、狼貴にこの罪をかぶせないこと。息子と夫に、それぞれ遺産を渡すこと。
そのとき、なぜか俺に託されたのが、この短刀だった。
(……”狼貴にそのときが来たら、渡してほしい”、そりゃいつなんだい? おばちゃん)
もともと銀誓館にいくわけじゃなかったから、あのときはこれを持って行くことはなかった。
「おばちゃん、俺、アイツにあっちで会ったよ。
 あいつさ、恋人なんて作ってたぜ? 髪もあんたとおんなじくらいで、背丈はだいぶ高かったな。ハーフかね、あれは。
 あいつ、あっちで力つけて、色んなことがあったんだろうな。だいぶ落ち着いてた。
 ただ、あいつ、刀とか銃とか苦手みたいでさ。
 人を傷つけるのが嫌だけど、使わないわけにいかないときは力を入れるあたりが、また無理してる感じだったな」
言葉がすらすらと出てきた。
「だから、多分まだこいつを渡すのはあとだ。
 きっと、”そのとき”はまだ遠いと思うからさ。」
だけど、
「それでも、持って行く。
 次は、銀がこれを持ってお参りにきてくれるかもな」
言って、短刀を持って、立ち上がる。
銀の母親…雅美おばちゃんは、とんでもなく若く見える人で、いつもにこにこと笑ってる人だった。
世話になった記憶はあまりないけれど、それでも、最後を看取ったのは確かだ。
だから、俺はこれを持っている。
「そのときまでに、あいつに勝ってくるぜ!
 あいつの口からそれは聞いてくれよな! じゃ、またな!」
またね、なんていう声が耳の奥に響いた…かもしれない。


「ててて……」
「まだ痛いのか?」
「手紙読まずに全力で殴ってきた親父がいうかぁそれを」
帰り道。
麓までの道を俺は親父の車にのってぶーたれていた。
昨日の夕方、墓前から戻ってきた俺を出迎えたのはお袋の料理と、親父の不意打ち。しかも木刀。
「俺じゃなかったら死んでたぞ!あれ!」
「お前じゃなかったら、やってないさ」
「あー、そうかい」
ぷいっと窓の外を向く。
サイドミラーの中で、山の景色が薄れていく。
「しかし、ギンセイカンってところの教えも受け入れるべきか迷うな。どのみち父さんはこれ以上使うこともないだろうが、親父はなんていってた?」
「好きにしろってさ。ただ、今度から里帰りのたびに指導を手伝えだとさ」
イグニッションカードなどの仕組みなんかは、うちじゃ重大な話だから、それは伝えた。
どのみち、伝えないとうちだとひどい目にあう、木刀の不意打ちみたいに。
「そういや、墓参りのときに、好孝おじさんにあったよ」
「そうか。」
カーブを曲がるためにハンドルを切る。
話が途切れた。
(…意図的だろうな)
親父は、あの騒動のとき、いなかったからな…。
「……次戻ってくるのは冬か?」
「そうなるかなー。正月くらいは過ごすかもな」
「いまさらお前に成績は期待してないが、いい成績なら喜ぼう」
「…具体的には?」
「赤点1つにつき、龍ヶ崎で水垢離1時間」
「ぶーーーっ!!」
や、やべぇ、冬の水垢離とか、超辛い……。
あーくそ、赤点とったら雪女にジョブチェンジしようかなぁー…。
あ、だめだ。1ヶ月もかかってたら冬休みに間に合わねぇ。
どうやってズルしようか、なんて考えてると、
「……父さんはな、村の外にいることが多い。
 だから、次帰るときは、携帯にでも連絡してくれ。迎えにくるからな。」
「……ああ、今度はな」
親父の願いは改めて受け取っておこう。
そうだな、車で移動ってのもこれはこれで悪くない。
「ついでに、彼女ができたら紹介してくれ」
「ばっ………!」
「はっはっはっはっは」
やってらんねぇやと外を向くと、それがさらに親父の笑いを誘ったらしい。
ああもう好きにしてくれ…。
初夏の空気の心地よさと、後悔の念と、そして笑い声を乗せて俺は帰途へついた。
あいつの待つ銀誓館学園へと。

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