TW2シルバーレインに登場するキャラ 銀・狼貴と谷繁・碧のキャラブログです
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「けっけっけ、ざまーみろっと」
微細な粒子をしみこんでいくカードを懐にしまう。
イグニッションの必要とか、あるいは力を振るうなって話があるかもしれないが、それはひとまずおいといて。
もともとあった力をとられるってのは結構いやなもんだ。
常識ってのは木の上を飛び跳ねてるだけで崩れるもんなんかね。そんなヤワなモンじゃないと俺は思うんだが。
まぁ、トラックの運転手が俺に先を越されて唖然としているのはきっと世界結界が一晩でなんとかしてくれるさ。
さて、村に到着した俺がまずいくべきは、静かな村に響き渡る掛け声の発生地。
鉄心流とかかれた看板を掲げる道場だ。
「セイッ!」「ヤッ!」「ハッ!」
「打ち込みやめぃ! 続いて鉄打ち! 構え!」
「「応っ!」」
懐かしい掛け声を聞きながら、道場を迂回する。俺が用があるのはその奥の家だ。
建築120年とかいう歴史を物語るような威厳…もなく修理の痕跡がそこかしこに見られるのが俺の実家、この那岐の里の主たる鉄家だ。
引き戸を開いて帰還を告げる。
「かあちゃーん、ただいまー」
声をかけると、ぱたぱたと音が響いて、白い割烹着姿の母ちゃんが顔を出した。
「おや、徹也。夏休みとはいえよう帰ったねぇ。今夕飯の支度しているからちょっと待つんだよ」
「あいよー」
手早く靴を脱ぎながら、ふとたずねる。
「ヒロと親父は? 道場からは声しなかったけど」
「雅浩なら英会話の塾へいってるよ。父さんはまだ会社。」
すげぇ、いつの間にできたんだよ塾。やるな都市化現象。そのうちこのへんもネオンでいっぱいになるのかね…。
「で、じいちゃんは道場か」
さっき道場から聞こえた声は俺の祖父のものだ。齢80前だっていうのになお現役なんだから頑丈な爺だよな。
コートを脱いで肩にかける。
「久しぶりだからって手を抜いたらばれるわよ」
「あいよー」
気楽に返事をしながら右の廊下を角で曲がって三番目、俺の部屋へ到着する。
コートはそのままおろして適当な位置にたたむ。
このコートもいい加減仕込みを減らすべきかね…。
部屋の隅、机の前方にかけっぱなしになっているのが俺の拳法着だ。
鉄心流の拳法着は空手なんかのそれとは違い黒が基本。
着替えようと手をかけたところで、ガタッと音がして机にあったものが落ちた。
どうやら拳法着に隠れるようにおいていたものをこちらに引き寄せてしまったらしい。
何が落ちたのかと、足元を見れば、それは短刀だ。
「……こいつは。」
それは、あいつの母から受け取ったものだった。
そう、五年前の、あの夜に──。
*****
その日は、雨が降っていた。
流れる血の、雨が。
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