・オープニング
「みんなで山に遊びにいかないか? 長野のコテージで二泊三日っ」
そう言い出したのは特攻服でお馴染みの谷繁・碧だった。
「でも交通費とか、あんまり…」
誰かの声ににやりと碧が笑ってみせる。
「わかってるって。交通費、宿泊費一切無料だっ」
ええ?と皆がどよめいた。
ちょっとそれはおいしすぎるのではないか。
「まぁ、もちろんゴーストつきなんだが」
ああ、と皆が納得した。
なるほど、ゴーストがでるというなら能力者の出番だ。
「でもなんでそんな話を団長が持ってくるの?」
「んー、これ、アニキからの申し出でさ」
アニキ。そういえば碧には保護者というアニキがいたのだった。
皆が生活する寮ひとつとってもその男の出資だ。
謎の男だが、それでも情報の出元としては納得だ。資金元に皆が感謝する。
「なんでもせっかく出資したコテージ付近にキナくさいうわさがあるとかで」
話をまとめるとこうだ。
長野県の白馬山の一角に絶景が見られるという山荘、そこを碧のアニキが買い取ったのだという。
ところが、その山荘いわくつきだった。
なんでもそこには男女のゴーストが住み着いているとかで、観光客が激減しているのだと。
ゴーストに一般人がかなうわけがない。そこで、碧に話が回ってきた。
そのゴーストを退治してくれないかと。
「このゴーストそんなに頻繁にでるわけじゃないらしい。
まぁ、出なくても費用はアニキもちになってるからそっちは心配いらない。
ていうか出してたまるかと交渉済みだ」
アニキという男、よっぽど碧に弱いのか。皆が苦笑した。
「で、聞いた感じだとこれは多分地縛霊のタイプかな。
男は登山服の格好。マトックをふりかざして攻撃してくる。まともにくらったら重傷だな……。
他に何か叫び声をあげると傷がふさがって攻撃力があがるらしい。
で、女はこっちも登山服。武器としてはロープをつかってくる。
ロープっていっても登山用のだからな、硬いし痛いぞ。
下手にくらうと縛られた上こっちの効果を打ち消されるみたいだ。
あとこっちも叫び声をあげるんだが、山彦みたくあたりにひびいてうるさい。
おかげで我を忘れて殴りにかかっちまうみたいだ。」
連携をとられると厄介だろう。
「作戦みたいなのはあとで話すとして……。
そうそう、コテージな、改装はまだ済んでないけどガスとか電気はちゃんと通ってる。
ただ食料はないんでちゃんと持っていこうな。
夜は星が綺麗だし空気もうまい。それにこの時期紅葉が綺麗らしいぜ。」
人気も少ないので、人払いの必要もほとんどない。万が一紛れ込んだとしても一人か二人だろう。
「ま、みんなでゆっくり楽しもうぜ!」
PR